そらりす丸・背景ネタ

今更ネタ、今回は「海坊主」の<そらりす丸>背景の元ネタ。判った分のみ。


※仮に、楼閣の最下層(巨大水槽と羅針盤が置いてある所)を、地下1Fとしています。


<楼閣 1F>
絵:広重の花鳥画「月夜 松上の木菟」
嵌め格子の柄:七宝(輪違い)紋


<楼閣 2F>
窓の嵌め絵:若冲「群鶴図」から、手前の2羽
格子:斜め(十字?網目?)


<楼閣 3F>
絵:国芳 「金魚づくし 百ものがたり」から、手前の2匹の金魚
(右側の三色流金を、紅白和金の上に移動)
格子:枡繋ぎ(六弥太格子を一重にした感じ)


<最上階 4F>
屏風絵:琳派


源慧さん達が泊まっていた部屋の、扇形の扉絵「薄(すすき)野の富士」や、絨毯の元ネタ、海坊主の屏風絵など、まだまだ不明。なんかみつけたらまた書きます。情報もお待ちしてます。


以下、付記(ネタはもうないよ〜)


各元絵は以下で見れます(絵画のみ。リンク切れの際はご容赦!)
なるべく検索の手がかりもメモっときます。

  • 「月夜 松上の木菟」

酒井好古堂 廣重・その他【みみずく】A Horned Owl
リチャード・クラモ浮世絵販売「Flora and Fauna」Ichiryusai HIROSHIGE(拡大版も見れます)
その他、hiroshige owlで画像検索すると、日本語ページ以外でヒットします。

  • 「群鶴図」

「若冲と江戸絵画」展 公式ブログフォトライフより
このページ、ずっと見せて貰えるといいですね〜!!

  • 「金魚づくし 百ものがたり」

蜻蛉屋http://akituya.gooside.com/さまの、擬人化の蔵>の「魚」をクリックしてみてください。
「百」以外の作品も拝覧できます。所蔵データも。




【格子の模様まで…】
楼閣の階ごとにデザインを変え、意匠を凝らしてますね。テーマカラーも変えて、慣れればキャラが船のドコにいるか一発で判る。(笑)しかし、嵌め格子のデザインまで変えているとは思いませんでした。あの透かし建具、中国では花板という独特の建具の装飾で、組み方にも意味があったりするらしい。


柱、手すりの横木、生簀(プール)サイドの枠、みんな模様が変えてある(色を変えるとか、多少の転用はあるのでしょうが…)
障子枠の形、屋上の竹垣風格子と板の間、船内用「沓」(スリッパですな)、とにかく物凄い凝りようです。
襖絵を「怪・化猫」から持ってこれたそうですから、多少、時間の猶予をえて凝れたのかもしれません。あるいは細部に思いっきり凝るため、既に在る絵を活用したともいえそう。
3D画像はすべての面を定義づけてやらないと、現実にはありえない「透明」部分が出てしまうので、とにかくテクスチャをつける必要がある。そこで「どうせつけるなら違う模様を描こう」となるのでしょうが、こう沢山あるとCGの利便性を生かしているやら、利便性に食われているやら^^;
なんにせよアイデア勝利。


極彩色の万華鏡、はたまたミラーハウスのような画面は、映像作品としての楽しさ無気味さを、存分に「魅せて」くれます。
しかし物語に立ちかえってみますと、あの造作の出所は、船主である三國屋多門ということになります。
無事に港へ還りついたなら、三國屋は<そらりす丸>を処分したのだろうか。以前にも増して商売に身を入れただろうか。
かのクリムトにはその名も「金魚」という作品があります。(以前お借りしましたサイトのページより)三國屋って半井似の狸親爺だし、<そらりす>に賭けた情熱もあんがい、女性への狂愛がすりかわったもの…なんて読みすぎ。


<そらりす丸>の異様な外見は、源慧ひとりで十分説明づく(なにせ海そのものをアヤカシ状態にした程の情念です)ので、ワキの三國屋がどうこうなど、スタッフがきっちり想定して描いたとは思えません。
描くべきテーマやモチーフをストイックなまでに忠実に追求し、各人が持てるありったけを注ぎ込んだために膨大な情報が織り込まれ…錯綜し、重なり合い、融合した果てに滲み出てきた、深さ豊かさが「モノノ怪」最大の魅力です。


【いろいろ、こまごま…】
佳世さんが、布団に寝たまんまで菖源さんのすがたを垣間見るシーンがあります。彼女の顔の前の2本の箸、囲炉裏にぐさっと刺さった火箸なんですよね。ああゆうショット、どこから思いつくんだろう、ちゃんと綺麗な模様が入っていて。不思議に印象的。


源慧らが泊まっていた扇形(正確に言うと円を直径よりも下方で切った形)のススキ野には、金銀が砂のように撒かれていました。キラキラして、触ったらザラリとするんじゃないか、と想像させます。キレイになった源慧さんの背景に持ってくるんですから、粋。


【ネタをひるワケ】
今回の元ネタは、そのものズバリではなく、一部借用の絵です。判ってみると超有名な(おなじみの)絵師ばかり。これまた、お好きな方が見れば一発でわかる。
それぞれに豊かな歴史背景をもった逸品ぞろいです。なので、掲載を迷いました。こうした作品をネタでむりやり結びつける事に、意味はあるのか。むろん、いままでずっとそうでしたし、今後はもっとネタが限られますから、余計ムリ感がでてくるでしょう。


そんな折も折り、たてつづけに「悲母観音」や「百ものがたり」の現物にお目にかかる機会を得まして。
どの絵も本当に素晴らしく、日本にこれほど愛らしいアートが存在したのかと深く感動しました。


ファンの立場から「元ネタ」と「背景画」の関係をどう位置付けるか、という、サイトを立ち上げてから繰り返し己に問うてきたテーマというか悩み、「モノノ怪ならなんでもいいんだろ?」とゆう直助の執拗な問い(苦笑)に、まだ答はないよ〜なままですが、一応限定つきでゴーサインを出した次第。


次回はついに蟲の話(といっても若冲菜根譚など)
しばらくPCにさわれないので、10月になる予定です。