調子にのってお薦めする時代/妖怪モノ漫画 その1
このエントリでは、さわやか(一部ドロドロ)な、主に青少年向けマンガをとりあげます。
リンク先はアマだったり楽天だったりしますが、基本的に新しい本ばかりなので、たいていの本屋さんで買えると思います。あ、なんかエントリの題名が予告とちがってますが、気にしない。
Oo。Oo。.。o。.。o。竹光侍。。.。o。.。oO。oO
竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 松本大洋,永福一成
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: コミック
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簡素な線で描かれた江戸の町の、乾いた風の吹き抜ける空気感がたまらない。そこかしこが“孕んでいる”予感のようなもので満ち満ちている。
この途方もないさわやかさは、江戸に出たばかりでなにもかもが目新しくウブな主人公、宗さんの視点から見た世界かなと思ったけども、読み進めていくと登場人物(や動物やもろもろ)それぞれの強力な、澄んだまなざしそのものだと思える。
自分に真っ直ぐな人しか出てこないので、ぶつかりあえば折れる。相手をそのままに断ずれば剣だが、宗さんの腰の物は竹光。折れる事を知らぬ人がしなう剣を持ち、基本的に最初から負けを視野に入れながら、かりそめの生を江戸というかりそめの町でほそぼそと、しかしほのぼのと長らえる。そんな町衆に埋もれて生きようとする宗さんの姿は清々しい。
装丁は見た目どおり美しい!本編の絵は浮世絵の下絵を思わせる。わら半紙にガリ版摺の和綴じ本なんてのも似合いそうだ。墨を多用しているらしく、絵は黒い部分が軒並みウエットで、水や血やどろどろしたものは最高に合うが、町道とかはもっと埃が漂うともっと好きかも。乾いていていいけどキレイすぎるんだもん。贅沢?
ジャケ買い。しても期待を裏切らない。見飽きない。
好きな場面:
・虫化する宗さん(蝶になったりカマキリの鎌をもったりする)───コミック一巻
・馬同士の会話───二巻
・木久地(きくち)の人斬り妄想(切り口から花が出るやつ)───二巻
・三巻ぜんぶ
・お勝が見たお山の夢───四巻
・沼から馬を引きずりあげる木久地───五巻
Oo。Oo。.。o。.。o。たまゆら童子。。.。o。.。oO。oO
- 作者: 佐野絵里子
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2004/12/20
- メディア: コミック
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京の都の片すみに、人々の信仰を集める小さなお堂があった。
霊験あらかたな観音様を祀るそのお堂は、如意輪堂と呼ばれ、今日も誰かが、願いをかなえにやって来る――。
様々な人々の心模様が不思議な童子との出会いによって導かれていく…。
華麗な筆、純和風の装飾的絵画で魅せる現代の平安幻想絵巻!
(http://www.daimokuroku.com/ 漫画大目録.com 解説より抜粋)
八百万の神の眷属、どうやら不変の存在らしい「たまゆら童子」の立ち位置は薬売りに通じる所。登場人物が皆、ぱっと見生きているのか死んでいるのか(!)わからないところも…いやいや、夢幻を描く物語どうし、似て非なるも通ずというあたりにとどめましょう。
総集編の再発が3巻にまとまって出ています。どこから読み始めてもOK。私は2巻目からでした。『竹光侍』と同じ古本屋で…。
歴史上の人物がばんばん出てくるけど興味のままつらつらと、肩ヒジ張らずに読めます。それでいて、深いィ話…。牛若丸(義経)を主体に描かれた話がいくつかあり、童子と若君が菖蒲を手に一戦まみえるシーンがほのぼの(でもぴりっとして)印象的でした。巻末に各話解説が、平安ウンチクたっぷりに載っているのもありがたい。
童子は軽業師のようにくるくると動き、パーンと飛び上がりざまに体をひねったり、いかにもしなやかに、いきいきと活躍します。ときにコワーイお灸を人間に据えたり、気の強い女性に囲まれておろおろしたりと、年齢不詳ながら仙人らしからぬ表情を見せる童子もまた魅力。『中国の壺』にいたドラゴン紫龍似の美男子仙人を思い出した(古いぞ)。
Oo。Oo。.。o。.。o。大日本天狗党絵詞。。.。o。.。oO。oO
- 作者: 黒田硫黄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/23
- メディア: コミック
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もちろん天狗が出てきます。時代物ではなく現代の妖怪マンガですが、とてもそんなチャチな言葉では表現できません。
このマンガを執筆していた時、著者は能にハマっていたらしく、能の演目にちなんだ人名が沢山使われています。また“明らかに”歴史上の有名人をもじったキャラもみうけられます。
が、そうした背景にかかわるようで拘わらない、どこまでも巨大なコクーンの外壁を滑りつづけていくようなすべすべした爽快さと浮遊感が、どちらかといえばジャンクで暗い画面からみょうに明快に、そして魔法のようにドッと溢れでるのです。本当に不思議。
雑誌の連載で出た4巻のコミックは(たぶん)絶版だけど、再編集版が3巻でます。大きさが同じなので、混ぜて買うと内容がダブるのでご注意。(←古本でやってしまった)(←やっぱ私だけか…)
そんなわけで、ご存知の方は多いとは思いますが、とにかく、お勧め、おすすめ。エントリ書くために書評をいくつも読んだらこれまた面白かったけど、もし初読ならば予備知識はいっさい入れないほうが。というかまずネット等でためし読みしましょう(や、画風が独特なので。。。)
Oo。Oo。.。o。.。o。しろいくも。。.。o。.。oO。oO
この本には、黒くて大きなオバケが出てきます。誰もが怖れ、そして憬れる“夜”について、オバケは教えてくれます。もしかしたら、オバケは“夜”そのものなのかもしれません…。
そう、フキダシのある絵本。日常の先にある扉を、そっと開いてみせてくれます。
さて、気になったらぜひ見るべし、見るべし…。