調子にのってお薦めする時代/妖怪モノ漫画 その2

このエントリでは、主にアダルト向けマンガをとりあげます。
リンク先はアマだったり楽天だったりしますが、基本的に新しい本ばかりなので、たいていの本屋さんで買えると思います。ただし、手にとってレジに行くのがほんのちょっぴりためらわれる…ことによっては…かもしれません。



Oo。Oo。.。o。.。o。大江戸綺人譚─のっぺら女房。。.。o。.。oO。oO

大江戸綺人譚―のっぺら女房 (時代劇漫画刃)

大江戸綺人譚―のっぺら女房 (時代劇漫画刃)

時代劇短編集。題名にひかれて手に取ったものの、あまりのアヤシさに1ヶ月ほど購入をためらった…でも読んで良かった。著者プロフはよくわからなかった、既刊本は時代劇ばかりであった。調べもの好きの、かなりインテリじゃなかろうか。
内容はすべて成年誌向けの艶笑譚、どの話もキャラやネタつながりで連続シリーズ物にできそうな濃厚な内容。廓や下町を舞台に情交あり怪異あり、ときにガツンとくるものあり(いろんな意味で)。
もうもうと立ちのぼる埃っぽさと艶っぽさがたまらない。義理と人情にしばられつつ、生き馬の目を抜く混沌、殺伐の浮世を渡ってゆく人々の物語。大地に根を張るのではなく根っこごと走り回っているような(笑)そして根づいた先々でひたすら栄養を吸いまくってるような。なんとなく、若い頃のバーホーヴェン映画(とかケン・ローチキアロスタミ描くところのヨーロッパ風俗モノ)に通じる雰囲気を感じる、むろんもっと湿っぽいけども。
ガキんちょが大人をカモにするシチュエーションは大好き。同様のネタは同作者の『難波鉦異本(なんばどらいほん)』がモトみたいな(確かめていません)。『難波鉦異本』は2004年度の手塚治虫文化賞・新生賞を受賞。ちなみに06年には『おお振り』が受賞している。(ウィキ
露骨にアレなシーンが多々ありますと一応言っとこう。エロエロですがエグくはない(リアルな男性自身の描写はちとエグい~~;)バカバカしさに破笑して、色事に興奮(あるいは絶望)して、俗世欲にげんなりして(または希望を抱いて)物語を終えたあとは、からりとココロがヌケました。
そうそう、のっぺら女房の話は、なにげに一番怖いです。独自解釈が面白いので、エロシーンいらないくらい。また酒合戦「水鳥記」からネタを取ったカオスな短編も収録されています。(「酒合戦」のウィキ)




Oo。Oo。.。o。.。o。鬼にもらった女。。.。o。.。oO。oO

鬼にもらった女

鬼にもらった女

虫けら様秋山亜由子氏と単行本の巻末で対談していたつながり。時代物描きでは有名な方です(私は初読。寡作の人なの?)。レディコミなどで掲載された物語の短編集ということで、男女の機敏を描いた作品が多い。
しかし、軽快である。でてくる人みな普通のヒトばかり(一部妖怪とか)で、人生の苦悩や危機に直面して、意気込んだり悲しんだりいろいろ起こる自分自身を、良くも悪くも常識的に距離をおいてながめている。読み手の日常感覚ととても近い、もうひとりの自分が眺めるというあの感じ。なぜそうなるの?という疑問の答えはないけれど、古典に題材をとった物語だから、というよりも、もう少し心の奥深くで、ほかに選択肢をえらばないどうしようもなさを、でもマンガだから世間話を聞く感覚でさらっとみれる(あははは…^^;)
そうそう、実尊寺はんのドロドロバージョン似な鬼が出てきます。鬼が女を喰うという表現は、たしか、女の意に染まぬ境遇を暗示していたような…まさかそーゆうイミで使われて…はいませんが、そんな事を妄想しながら読むと、またちがった読感が。




Oo。Oo。.。o。.。o。新今昔物語 鵺。。.。o。.。oO。oO

新今昔物語鵺 (アクションコミックス)

新今昔物語鵺 (アクションコミックス)

このカオスな漫画、購入したものの紹介しようかどうか迷った(すみません)80年代に大量に出回った(今でもか?)、伝記モノや歴史モノのマンガをパロったような、本当かウソか判らない薀蓄を大量に放り込んだ短編集。むろん表題にひかれて読んだのですが、、、
ウィキによると、『刑務所の中』の原作者。多数の著作があり、過去の時代モノが多いらしい。
む、たしかに時代モノ、ではあるが…『鵺』を含めた冒頭の3編くらいまでは『ムー』に載ってそうなSFチックな内容。なぜコレらが時代モノなのか、元ネタが絵巻とかだからか。とにかく、ヌエの造型はコワイ。脱皮コワイ。
ラストの源平ネタまで読むと、頭に?マークが点灯する。諸行無常の哀しい物語を読んでいたつもりだったのに、あっけにとられてしまう。お化け屋敷でけむにまかれて別の出口から無理矢理出されたような、妖怪オリンピックに参加していたつもりが突然独りで平原に取り残されたような。
絵がまた70年代風リアル、おどろおどろしい雰囲気には事欠きませぬ。かといって今の感覚からするとグロさもやりすぎ感は全然ない。首や足が飛んでもみょ〜にさっぱりしてるし。とはいえ、マンガの執筆は80年代だから、当時は衝撃的だったに違いない。つまり、時代に新境地を開拓した漫画家なのである。
執筆意図とは違うかもしらんけど「人間らしさってなんだ、これでいいんだ」という肯定と許容が、うすらぼんやりとした光ではあるが垣間見えるような気がした。
刑務所の中 (講談社漫画文庫)




Oo。Oo。.。o。.。o。大江戸美味草子(おおえどびみぞうし・むまそうし)。。.。o。.。oO。oO

大江戸美味草紙(むまそうし) (新潮文庫)

大江戸美味草紙(むまそうし) (新潮文庫)

片方はマンガ、もう一方はエッセイ文。マンガを先に見つけ、題名つながりで読んでみた(正確には、エッセイは今読んでいる最中)
ラズウェル細木という漫画家は食通で知られるが大変なジャズ通でもあるらしい。江戸庶民の食文化を扱ったのは流行りもあるんだろうけど情報量はものすごい。フキダシの内外に几帳面に記されたウンチクを(無知な自分が)拾っていくのは、絶望先生の背景を丹念に読むのと同じくらい時間がかかった。でも面白いから読みきった。COMIC 乱に掲載してる『お江戸えこ暮らし』も気になるところ。『大江戸 酒道楽』という単行本もある。
かたや杉浦日向子といえば江戸文化関連といえばこの人、検索すれば必ず名前があがる当代きっての江戸通作家。いちげんさんお断り、みたいな強烈な内容かと思ったらどうして、昼食後のちょい読みですっと気分変え、夕食後の拾い読みでほっとなごむような読みやすさ。購入したのは文庫だが、装丁のブルーはもちろん、ページの文章の「見た目」もすっきりと美しい。随所に挿絵の小技を効かせて、さりげなくスキなく、…やっぱ、ピリッと気の張ったアネさんだったのだろうなぁ。




さて、最後は疲れて尻すぼみになってしまった(御免)マンガ紹介エントリいかがでしたか。ベンリな世の中になり、ネットで閲覧もけっこ気楽に利用できるので、冬休みの頭休めにマンガサーフィンもいい。手にとってじっくり愛でられる書籍を求め、本屋へくり出すのも悪くない。というか、私自身にとってキッカケになりました。一冊をじっくり読み込むだけでも苦労してるんで、あまり手を広げなさんな、て感じですけどね。